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日本酒の味を科学的に分類!?新しい評価方法とは

日本酒の味わいを表現するとき、「辛口」「甘口」「淡麗」「濃淳」などの言葉をよく聞きますよね。でも、実際にこれらの味を正確に分類するのはとても難しいのです。今回は、日本酒の味の評価方法について、従来の方法と最新の科学的手法を比較しながら解説します!


これまでの日本酒の味の評価方法


昔から日本酒の味を評価する方法としては、酒蔵の杜氏(とうじ)や専門家による官能検査(人の感覚で味を確かめる方法)が一般的でした。また、「日本酒度」や「酸度」などの数値を使って、以下のように分類する方法もありました。


  • 濃淳辛口(のうじゅんからくち):コクが強く、キレのある味わい

  • 淡麗辛口(たんれいからくち):スッキリとした軽い口当たり

  • 濃淳甘口(のうじゅんあまくち):コクがあって甘みが強い

  • 淡麗甘口(たんれいあまくち):軽やかで甘みのある味わい

しかし、この分類方法ではすべての日本酒をうまく当てはめることができないことが課題とされてきました。特に、市販されている日本酒の多くが「濃淳辛口」に集中してしまい、味の違いが十分に表現できていないという指摘もあります。


言葉の意味として先に理解したいのは「コク」と「キレ」

日本酒の味わいを説明するときによく使われる「コク」と「キレ」という言葉。これらの意味を正しく理解しておくと、日本酒の味をより深く感じ取ることができます。

  • コク:味の厚みや深みを指します。例えば、ミルクと生クリームを比べると、生クリームの方が濃厚で「コク」があると感じますよね? 日本酒でも、旨味成分が豊富なものはコクがあり、しっかりとした飲みごたえがあります。

  • キレ:飲んだ後のスッキリ感や後味のキレの良さを表します。例えば、濃厚なシチューとあっさりしたスープを比べると、スープの方が「キレ」が良いと感じるでしょう。日本酒では、酸味が適度に効いていて後味がスッキリしているものを「キレがある」と表現します。

つまり、コクのある日本酒は「しっかりした味わい」、キレのある日本酒は「後味がスッキリ」というイメージを持つと理解しやすいですね。


味覚センサーを使った最新の日本酒評価!

近年、科学技術の進歩により「味覚センサー」という機械を使って日本酒の味を数値化する方法が開発されました。この技術を使えば、人間の味覚だけに頼らず、データをもとに日本酒の味を分類できるのです。

味覚センサーでは、以下のような味の要素を測定できます。

  • 酸味(すっぱさ)

  • 塩味(しょっぱさ)

  • 旨味(コク)

  • 苦味(にがさ)

  • 渋味(しぶさ)

この技術を使って、日本酒100種類を分析した結果、新たに「Brix値(甘辛)」「酸味値(辛さ)」「旨味コク値(旨味)」という3つの指標が日本酒の味を分類するのに適していることがわかりました。さらに、味覚センサーでは「渋味刺激」「苦味雑味」「塩味」などの測定値も取得でき、これらが日本酒の味の個性にどのように関わるのかについても研究が進められています。


科学で解き明かす!日本酒の味わいを3つの指標で分類

1. Brix値(ブリックス値):甘さと辛さの指標

Brix値(ブリックス値)は、液体中の糖分の割合を示す指標で、主にブドウ糖や果糖の含有量によって決まります。この名前は、19世紀のドイツの科学者アドルフ・ブリックス(Adolf Brix)に由来しており、彼が考案した糖度測定法がもとになっています。Brix値が高いほど糖分が多く、甘口の日本酒になりやすく、逆に低いと辛口になります。ただし、日本酒度(糖分とアルコールのバランス)とも関連しており、単純に糖度が高いからといって必ずしも強い甘さを感じるわけではありません。本研究では、アルコール度数16%の場合、Brix値が11.7以上なら甘口、11.7未満なら辛口と定義しました。これにより、より明確に日本酒の甘辛を判断できる指標として活用できます。


2. 酸味値:辛さの指標

日本酒の「酸度」と「酸味の強さ」は必ずしも一致しないことがわかりました。例えば、レモンの酸味は鋭く刺激的で、ヨーグルトの酸味はまろやかでクリーミーに感じられるように、日本酒の酸味も成分の違いによって印象が変わります。これは、単に酸の種類や濃度だけではなく、他の味覚成分とのバランスや相互作用が影響するためです。例えば、クエン酸が豊富な日本酒はフルーティーな酸味を感じさせる一方、乳酸が多いものはまろやかで優しい酸味になります。研究の結果、従来の酸度よりも味覚センサーで測定した酸味値の方が、辛さを表す指標としてより適していることが確認されました。


3. 旨味コク値:旨味の指標

「旨味コク値」は、日本酒のコクを表す指標です。アミノ酸やコハク酸などの旨味成分の量と関係しており、この値が高いほど濃厚な味わいになります。例えば、味噌汁に出汁を多めに入れると味が深くなるように、旨味成分が豊富な日本酒はより重厚な味わいになります。また、コクが強い日本酒は、チーズや肉料理などのしっかりした味の食べ物と相性が良いとされています。





まとめ:日本酒の味わいをデータで楽しもう!

これまで日本酒の味の評価は、杜氏や専門家の経験に頼る部分が大きかったですが、味覚センサーを使うことで、より正確に分類できるようになりました。Brix値・酸味値・旨味コク値を基準に分類することで、

  • 甘口と辛口の境界が明確になる

  • 日本酒の濃淡の違いがより分かりやすくなる

  • 渋味刺激や苦味雑味、塩味などの細かい味の特徴も分析可能になる

といったメリットがあります。

例えば、渋味刺激が強い日本酒は木桶仕込みの熟成酒に多く見られ、しっかりとした味わいが特徴です。一方で、苦味雑味が抑えられた日本酒は、フルーティーで爽やかな印象を持つものが多くなります。こうした情報を活用すれば、自分の好みにぴったりの日本酒を見つけやすくなるでしょう。

日本酒選びの際に「このお酒はどんな味だろう?」と迷ったら、これらの指標をチェックしてみるといいかもしれませんね!新しい技術を活用して、自分にぴったりの日本酒を見つけてみましょう!

 
 
 

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